入賞・入選作品一覧
組作品の作品番号(枝番号)は写真左の作品から順に付しています。
(一部例外あり)
審査員より
「カンパ~イ!!」と沢山の杯がぶつかった瞬間のような、動きのある楽しい作品です。審査会場ではこの作品を前に、話が弾みました。「何を入れたら活きてくるのかな?」中には料理家の審査員もいらっしゃいます。「調味料やハーブを入れたら」「形の違うナッツを少しずつ」「花びらを浮かべてみては」と、いろいろなアイディアが飛び交います。想像するだけでワクワクしてくる器です。言い換えれば、使い手に最後の詰めを委ねたこの器を使いこなすところから、乾杯の浮き立つ気持ちが始まるようです。磁器の還元焼成による青みをとどめた白の器のフリルの縁には、小さな金の点が留まって囁きあっているようで、楽しい会を予感させます。このGalaxy(銀河)と名付けられた作品が、今年の「クラフトで乾杯」の顔に決まった時、審査員全員から自然と拍手が沸きました。
岡本 昌子(テキスタイル作家・日本クラフトデザイン協会理事長)
受賞者の言葉
磁器の手びねり作品は、これまでも様々な形状表現をしてきました。オブジェであったり、カップ、皿、ボールなどの器であったり、アイテムにこだわらず、手びねりとしては扱いづらい磁器土といろいろな対話を重ねてきた気がします。
今回の作品「galaxy vol.1」は乾杯の祝いのテーブルに置かれた時に、一同に会した人たちを一瞬困惑させ、そして笑みを誘うようであれば、作り手としては嬉しい限りです。
002
3人の妖精に乾杯。
福原 俊樹 ふくはら としき(北海道札幌市)
(2)7.0×7.0×18.0cm/磁/¥8,000
(3)5.0×5.0×9.0cm/磁/¥3,000
審査員より
この作品の重要なポイントは、なによりも不定形のかたちにあります。それは縦に伸びる雲のような、また大地から生まれたばかりの植物のような不思議なかたちで、それが最大の魅力でしょう。ファインアートでいえば、アルプの彫刻のようでもあり、またダリやタンギーの描く不定形のオブジェのようなかたちです。つまりこのかたちは、まさにシュルレアリスムのオブジェを思い起こさせるように思います。したがって非現実の世界からやってきたような不可思議な様相で人を惹きつけるのでしょう。作者が妖精をイメージして作ったのもうなずけます。それぞれの大きさのちがう三つが並んでいて、家族で乾杯することを想定しているように見受けられますが、これがさまざまな大きさ、さまざまなかたちのものがたくさん並べば、さらにシュールな度合いは高まり、妖精の森のなかでの宴会のようになるかもしれません。大変不安定にも見えるかもしれませんが、飲み物を注ぐと意外と安定するようです。単色のオレンジによる色彩は、不定形の茫洋としたかたちに明快なモダニズムを与え、それがかたちを引き締める効果をもたらしているように思います。
佐藤 友哉(札幌芸術の森美術館 館長)
受賞者の言葉
優秀賞を頂きまして大変嬉しく思っております。日頃陶芸に携わるなか、今の自分の力を少しでも越える、作品を生み出したいと思っております。あるとき森で歓喜に満ち踊る妖精たちの姿がイメージされ、その優雅さと躍動を型として写し取りたいと思い、さっそく陶土をこね始めました。焼き上がった器を手にしたとき、あの妖精たちと共に祝杯を上げたく思った次第です。これからも一層精進を重ねたいと思っております。
003
Garden Party
森上 真 もりがみ まこと(沖縄県糸満市)
(2)(ワインクーラー)25.0×25.0×15.5cm/ガラス/¥10,000
審査員より
ガーデンパーティーの乾杯用グラス。パーティー会場で、お花を配られる行為と、お花を持っている姿までもデザイン。乾杯の時も大勢で乾杯すれば「花束」にもなり空間を作る。大賞作品と決選投票で惜しくも優秀賞でしたが、限られた場所と時間だからこその形が素晴らしい。
小泉 誠(家具デザイナー)
受賞者の言葉
屋外でのパーティーや、披露宴でのスターティング用のグラスに。乾杯に使用したグラスはそのままギフトとしても。スパークリング系の飲物から立ち上がる炭酸が花粉のイメージになる様に。また顔を近づけ香りを愉しむ時には、花の香りをかぐ様に見えるように製作しました。ワインクーラーは、内側に絞る形状にすることで、グラス(花)を生ける時の安定感に気をつけています。特別な時間を特別なグラスで。
審査員より
梅の花のかたちの酒器は触れると気配を映すようにゆらぐ。麻布と漆で張り合わせ黒と赤の漆を何度も塗り重ねて丁寧に研ぎ出した作品である。中心の蕊は金蒔絵でほんのりと立体感があり控えめな色香がある。お酒を注ぐと5枚の花びらが湖面に映した緩やかな山並みとなって現れる。八葉蓮華の極楽浄土とはこのような景色だろう。こころの内から美しい作品だ。震災で海に眠る人たちに捧げられた祈りの作品である。あの世とこの世をつないで、魂を鎮めるための献杯である。
若き女性作家の想いと漆の真摯な取組は、日本の良き伝統を踏まえて21世紀の新たな可能性を拓くと感じた。今後も楽しみな逸材である。
上遠野 敏(札幌市立大学デザイン学部・大学院デザイン研究科教授)
★ 006
森で拾ったガラス
木村 俊江 きむら としえ (埼玉県久喜市)
(2)(グラス)9.5×8.9×6.5cm
(3)(グラス)9.5×8.2×6.2cm
(4)(グラス)9.2×8.3×7.4cm
(5)(グラス)9.7×9.5×7.5cm
(6)(グラス)9.0×9.0×7.0cm/ガラス/¥100,800
審査員より
とろりとした印象のガラス、色味や柄の入り方、飲み口のよさ、大鉢とグラスの関係。
どれもバランスよく完成度が高く、楽しさに溢れています。料理やお酒がとても好きな方なんじゃないかなと思わせる佇まいがあり、今回の応募作品の中で一番使いたいなと思ったクラフトです。
オカズデザイン(料理・グラフィックデザインチーム)
008
びあ・まぐ
丸山 祐介 まるやま ゆうすけ(神奈川県横浜市)
(2)9.5×9.5×15.5cm/金属/¥40,000
(3)10.0×10.0×13.5cm/金属/¥40,000
(4)11.0×11.0×13.5cm/金属/¥40,000
(5)9.0×9.0×15.0cm/金属/¥40,000
審査員より
晩酌にはビールを欠かさない自分には嬉しい、上質なタンブラーの組作品。ビールに見立てた金と銀が素材感があり、飲み口まで注ぐと透けているようにみえて綺麗です。冷たさもキープしてくれるので、おおぶりでも温まらない実用性もいいですね。5点とも違うデザインをすることでふくらみを持たせたかったのだと思いますが、個体差がより強く出たらさらによかったと思います。
次作品を楽しみにしています。
オカズデザイン(料理・グラフィックデザインチーム)
審査員より
みんなで丸くなってこの星のテーブルの周りに座って乾杯したり、自分のご褒美に一人独占して酒と酒肴を置いてみたり。星空の下、恋人同士でワイングラスを傾けてみたり、たくさんのイメージが湧く作品です。木目の美しさと直線のシャープさを表現した星のテーブルに自然物のあたたかみを感じました。「丸くなるな、星になれ。」「自分の個性を大切にして、もっと自信をもって生きて行く方がいいよ。」と応援してくれる作品です。これからも作者のチャレンジングな作風を期待します。乾杯をもっとおいしくする作品です。
小野寺 哲也(サッポロビール博物館 館長)
審査員より
水滴のような大きな木の器。乾杯の輪の中心になり、酒器を居れたり、旬の食を設えたりと圧倒的な存在感が心地いい。水滴の形は持つ「取手」という機能にもなり、用途を兼ねた美しい器です。
小泉 誠(家具デザイナー)
審査員より
気の合った仲間とちょっぴり苦みを感じる美味しいビールで乾杯したい。
この苦味がわかったら大人ですね。二十歳になった若者にも、往年のビールファンにも選ぶ事を迷ってしまう色とりどりの美しさ、ビールの黄金色と泡の銀色をイメージさせ、喉を潤すビアマグ。いますぐ乾杯したくなる愉しい作品です。材質の木が思ったより軽く感じ、手の中で優しく一体となり安心感を与えてくれます。
小野寺 哲也(サッポロビール博物館 館長)
審査員より
この作品の魅力はなによりもカラフルな色彩と渦巻きの模様でしょう。オプティカル・アートさながらに見る人、使う人に強く楽しいインパクトを与えます。モアレが生じるので飲み物を注ぐ前から錯視による軽い眩暈が起こってしまいそうですが、これはアペリティフのような効果だと考えればそれもまた楽しいと思います。いろいろな色彩を一堂に集めれば、大勢の人たちとの乾杯が大いに盛り上がるにちがいありません。
佐藤 友哉(札幌芸術の森美術館 館長)
審査員より
乾杯を華やかに盛り上げてくれる、とても綺麗な器です。華やかですが派手派手しさはなく、ほんのり抑えた色味や模様が料理にも使いやすく、盛り皿としてもいいなと思いました。
裏から見ると透けが美しく、眺めていて飽きません。
オカズデザイン(料理・グラフィックデザインチーム)
審査員より
薄茶のための茶碗です。造形を伴う作品は菓子器などでは見るものの、茶碗自体に花が開いたような彫刻が施されていて、とても新鮮でした。薄茶の緑が入ったら、さぞや美しいだろうと思うとともに、気持ちを込めて亭主が点てた茶を、感謝しながらいただく「静かな乾杯」への提案が、心を動かしました。お点前で使うにはまだ難しいところがありますが、このシリーズの今後の作品を楽しみにしたいと思います。
岡本 昌子(テキスタイル作家・日本クラフトデザイン協会理事長)
★ 015
CIP CIN MEOTO
林 由紀子 はやし ゆきこ(イタリア カーリ)
(2)9.0×9.0×8.4cm/陶 ¥12,000
審査員より
一目見て、「これを受賞作品にしたい」と思った。
箱についた取っ手を回せば店主がビアマグを差し出し、三人の客がビールを掲げて乾杯をする木製の自動人形。しかもオルゴールが奏でるのはオペラ「椿姫」の「乾杯の歌」だ。遊び心にあふれ、しかも造りは精緻で技量が高い。クラフト展の幅を広げる点でも、公募の狙いに最もふさわしい作品だと思った。作者はこの作品を「麦酒の神様に捧げる」という。その心意気にも、乾杯!
外岡 秀俊(ジャーナリスト・元朝日新聞東京本社編集局長)